発達障害とは、生まれ持った脳の特性によって、日常生活にさまざまな困りごとが生じる障害のことです。わが子の様子が周りと違ったりすると「もしかして発達障害かも?」と不安に思う親御さんは少なくありません。
専門機関によって発達障害であると診断された場合には、症状に応じた適切なサポートが必要となります。そこで今回は、発達障害の症状や種類、サポートについて詳しく解説していきます。
発達障害とは
そもそも発達障害とは、生まれつき持った脳の特性によって、日常生活において行動や情緒に特徴が見られる状態のことです。外見で判断することができないため、一見すると障害があると気付かれにくいですが、本人は生きづらさを感じているケースが少なくありません。
発達障害にはさまざまな種類があります。また、同じ種類の障害を持っている場合でも、特徴の表れ方は多様なので、人それぞれ違った悩みを抱えています。発達障害の子どもがいる場合には、その子の特性を理解したうえで、適切なサポートや工夫を行うことが大切です。
発達障害には種類がある
発達障害にはさまざまな種類があります。それぞれの特徴や症状について解説します。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症とは、対人関係やコミュニケーションに支障が生じる障害のことです。相手の気持ちを読み取れなかったり、自分の気持ちをうまく表現できなかったりといった特徴があります。
また、こだわりの強さや特定の物事に関する強い関心、五感の過敏さなどの特性が見られます。言葉の発達に遅れが見られたり、オウム返しが多かったりすることから、他者と関係を築くことに苦手意識があります。
これまで、自閉スペクトラム症は「自閉症」や「アスペルガー症候群」など、さまざまな名称で呼ばれていましたが、2013年にアメリカ精神医学会が診断基準「DSM-5」を発表したことで、自閉スペクトラム症と統一されるようになりました。「Autism Spectrum Disorder」の頭文字を取って、ASDと呼ばれることもあります。
自閉スペクトラム症のある子どもは、友達を作るのが苦手であったり、一方的な人間関係であったりすることが多いため、対人関係に悩みを抱えやすい傾向にあります。
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症とは、学校や家庭などにおいて、落ち着きがなかったり、順番を待てなかったりといった特性が顕著に見られる状態のことです。注意力散漫やミスが多いなどの特徴も含まれます。
注意欠如・多動症の症状を持つ子どもは、授業中に立ち歩いたり、先生の話をじっと聞くことが出来なかったりします。そのため、同年代の子どもと比べて、注意力が足りないと評価されることもあります。
学習障害(LD)
学習障害とは、全体的な知能には問題がないものの、読み書きや計算など、特定の学習能力に発達の遅れが見られる障害のことです。困難を感じるポイントは人によって違いがあります。
たとえば、読む作業が苦手な場合は「読字障害」。書く作業が苦手な場合は「書字障害」と呼ばれます。書字障害を抱える子どもは、黒板をノートに写し取ることに集中しすぎて、授業の内容がわからなくなるような事態が起こりがちです。
とくに日本においては、板書を利用した授業が多いので、読み書きが苦手な子どもは学習そのものに苦手意識を持つケースがよく見られます。
チック症
チック症とは、本人の意思とは関係なく、素早い動きや発声が出てしまう障害のことです。行動に対しては「運動チック」。発声に対しては「音声チック」と呼ばれることもあります。
チック自体は子どもによくある症状です。一般的には、成長に伴って自然と収まるケースがほとんどです。ただし、運動チックや音声チックが1年以上継続し、日常生活に支障をきたす場合には「トゥレット症」と呼ばれます。
吃音
吃音(きつおん)とは、滑らかに話すことができない状態のことです。単語の中で特定の音を繰り返したり、言葉が出ずに間が空いたりするので、他者とのコミュニケーションがうまく取れないことがあります。
吃音を持つ子どもは、周りからからかわれたり、注意されたりすることで、話すことに苦手意識を持ってしまうケースが少なくありません。
発達障害のサインやサポートについて
発達障害のサインやサポート内容について、詳しく解説します。
自閉スペクトラム症(ASD)の場合
自閉スペクトラム症のサインの一例としては「目を合わせない」「笑い返さない」「後追いしない」などが挙げられます。他の子どもに関心を示さなかったり、言葉の発達に遅れが見られたりするなどの症状も見られます。
自閉スペクトラム症のある子どもは、療育を受けることで、日常生活に必要なスキルを伸ばし、社会性を身につけることができるようになります。また、先の見通しが立っていない状態に不安を感じやすい特性があるので、視覚的な手掛かりを使ってサポートすることで、安心して過ごせるようになります。
ASDを根治するための薬などはありませんが、症状の緩和を目的として薬を使用することがあります。
注意欠如・多動症(ADHD)の場合
注意欠如・多動症のサインとしては、基本的に落ち着きがなく、じっと座っていられないというものがあります。また、学校などの集団生活においては、授業中に立ち歩いたり、しゃべったり、順番を待てなかったりといった症状が見られます。
注意欠如・多動症の子どもは、長い間集中することが苦手なので、伝えたいことはなるべく短く簡潔な言葉で説明しましょう。座らせたいときには、気が散りにくい座席を選んで指定するなどの工夫がおすすめです。
勉強などのやるべきことがあるときには、集中しやすい環境を整えることが重要です。おもちゃやテレビなどの気が散る要素はなるべく排除しましょう。
また、集中して取り組む時間は短く設定し、事前に休憩のタイミングを決めておきましょう。作業量は少なめに設定することで、集中力を長持ちさせることができます。
なお、うまく集中できない場合でも、それを否定するような言葉を感情的にぶつけるのはNGです。良い取り組みを褒めて伸ばすように工夫すると良いでしょう。やるべきことをリスト化するのも効果的です。
ADHDはASDと同様に根治するための薬は開発されていません。ただし、工夫を行ったうえで日常生活に困難が生じた際には、薬を服用する治療を行うこともあります。薬を使用することで、症状を緩和することができます。
学習障害(LD)の場合
学習障害の場合、黒板などの書き写しが難しかったり、簡単な計算が出来なかったりといった症状が見られます。ただし、どの能力に遅れが見られるかという点は、人によって異なります。
そのため、書くことは得意でも読むことが苦手であったりします。同じ学習障害を持つ子どもでも得意なことと苦手なことが異なるので、得意な部分は伸ばしつつ、苦手な部分は課題の量や質を調整するようにしましょう。
子どものペースに合わせてゆっくりと学習できるようなサポートが大切です。
まとめ
今回は、発達障害について症状や種類を解説しました。発達障害とは、生まれつき持った脳の発達度合によって生じる障害のことです。
発達障害には、自閉スペクトラム症をはじめとして、注意欠如・多動症や学習障害などの種類があります。自閉スペクトラム症はASD、注意欠如・多動症はADHDとも呼ばれます。
それぞれ特性の表れ方は異なるため、それぞれの症状に合わせたサポートが大切です。発達障害のサインが見られる場合には、専門機関を受診して診断を受けることをおすすめします。
障害の程度や年齢などによっても異なりますが、適切なサポートを受けることで、日常生活における困りごとを軽減することができます。本記事が参考になれば幸いです。