2024年2月6日より、障害福祉サービス等の報酬改定が適用されています。そこで、大きなポイントになるのが「5領域」です。
報酬改定の内容には「5領域を含む総合的な支援」が含まれています。そのため、これまでの支援に加えて、5領域の総合的な支援が重要です。
ここでは、報酬改定による影響や事業所の管理などについて詳しく解説しています。放課後デイサービスを運営している人は、ぜひ参考にしてください。
制度改定の内容
障害福祉サービスの報酬改定は、2024年2月に施行されました。放課後デイサービスを運営している人は、改定内容を把握しておく必要があります。
改定される理由や内容を把握することで、慌てずに準備できるのです。また、今までよりも利用者に寄り添った対応ができます。
ここでは、改定された理由と内容について解説しましょう。
改定される理由
放課後デイサービスは、需要が拡大したことにより、増加傾向にあります。放課後デイサービスの運営は、公費が使われることもあり、利益を求めた事業者が多く参入しているのです。
その結果、管理がずさんな放課後デイサービスや不正請求を行う事業所が増えているのが現実です。もちろん、中には利用者に寄り添っている事業所もあります。
これまでの何度か改定されましたが、支援する内容は事業所に任している部分がありました。そこで、今回放課後デイサービスの基準が改定されることになりました。
基準改定をすることで、放課後デイサービス全体のサービス向上が期待できます。
5領域について
今回の改定で、放課後デイサービスは「5領域」を含めた総合支援が運営基準に追加されました。5領域には、利用者の健康・生活や認知・行動などが含まれています。
5領域は、これまでの児童発達支援ガイドラインに明記されていました。しかし、今回の改訂により放課後デイサービスにも5領域に沿ったサービス提供が求められます。
ここで、もっとも重要なポイントは、5領域すべてに対応しなければならない点です。そのため、すでに運営している放課後デイサービスの中には、対応の見直しが必要な事業所もあります。
事業所の運営や管理を見直すにあたり、把握しておくべき5領域の内容は後ほど詳しく解説しましょう。
運営基準に対応方法が明記される
放課後デイサービスで総合的な支援ができるよう、新たに運営基準に対応方法が明記されました。事業所に求められる内容は、次の2つです。
まずひとつ目は、5領域すべてを満たしている支援を行うことです。今回の改訂で、放課後デイサービスは5領域を満たす支援が必須となりました。
これは、すべての放課後デイサービスが、利用者に寄り添った支援をすることが目的です。これにより、収益目的の事業所や不正請求をする事業所を減らせるでしょう。
ふたつ目は、事業所の個別支援計画で、5領域の対応方法を明確化することです。個別支援計画書には、具体的な支援内容やそのほか必要事項を記載しなければなりません。
支援プログラムの作成と公表が義務化された
指定児童発達支援事業者に該当する場合は、各事業所で支援プログラムを作成し、公表することが義務化されました。
支援プログラムには、もちろん5領域に関する支援内容を記載します。作成した支援プログラムを公表しなかった場合、報酬の減算が施されます。
ただし、未公開による減算処理は、1年間の経過措置が設けられているため、実際に施されるのは2025年4月1日以降です。
5領域の具体的な内容
放課後デイサービスでの支援は、5領域の項目をすべて満たす必要があります。そのため、事業所によっては、支援内容を見直さなければなりません。
健康・生活
健康・生活の項目では、利用者の健康状態維持・改善、基本生活のスキル獲得などが目的です。健康状態の把握では、日頃から利用者の健康状態をチェックし、異常があれば必要な対応を行います。
また、意思表示が苦手な利用者に対して、小さなサインに気づいたり、心身の異変に気づいたりできるような細かな観察が必要です。
さらに、利用者が健康的な生活が送れるように、睡眠・食事・排泄の基本的なリズムが身につくような支援を行います。その際、支援がなくても基本生活ができるよう指導するのも支援内容のひとつです。
そして、障害をもつ子どもが社会で生活するために必要な社会訓練も実施します。健康・生活の項目を満たすための支援として、トイレトレーニングや時間に合わせた行動指導などがあげられます。
運動・感覚
運動・感覚の項目では、運動や動作の向上が目的です。主な支援内容としては、自力での歩行や車いすの移動など、生活に必要な移動力の向上などがあります。
また、子どもが保有している感覚を飽きずに向上できるように、遊びに取り入れながら支援をします。感覚に偏りがある場合は、無理のない範囲での調整が必要です。
運動はダンスやスポーツを利用して、楽しみながら行うのがおすすめです。また、視覚や聴覚を刺激するクイズやゲームを取り入れるとよいでしょう。
認知・行動
認知・行動の項目では、認知の発達や行動の習得などが目的です。事業所は、視覚や触覚などを充分に活かしながら、認知機能の発達ができる支援を行います。
また、必要な情報を収集し、行動につなげられるような発達支援も必要です。日々生活する中で、数量や重さに応じて適切な行動が異なります。
自身で適切な行動が判断できるスキル習得も、必要になるでしょう。これらの支援には、ブロックを用いた創作活動や音楽を流して五感を刺激する活動がおすすめです。
言語・コミュニケーション
言語・コミュニケーションでは、言語の形成・活用やコミュニケーションの基礎的能力の向上などを目的としています。支援には、体験と言葉の意味を紐付けて、自発的に発生できる取り組みが必要です。
また、社会生活に必要な相手の意図を理解したり、自分の思いを伝えたりするスキル習得の支援も行います。さらに、言葉や文字だけでなく、身振りやサインで意思伝達する場面も出てきます。
子ども一人ひとりに合った方法で意思伝達ができるように、適切な方法で支援することが大切です。伝言ゲームやロールプレイングなどで、能力が身につけられるよう支援しましょう。
また、子どもの好きなことや考えを発表するプレゼンも効果的な支援方法です。
人間関係・社会性
人間関係・社会性の項目では、他者との関わり方や問題なく集団へ参加できるようになるのが目的です。この支援では、身近な人との信頼関係を築いたり、安定した関係を保てたりします。
ごっこ遊びなど、楽しみながら子どもたちの社会性の発達を促します。まわりの子どもに無関心な利用者がいれば、並行遊びから役割分担やルールを守って遊ぶ能力を身につける支援が必要です。
また、周りの大人が介入できないような状況でも、自己判断ができる力も重要です。ルールや手順を守りながら、自己判断して行動できるよう支援をしましょう。
ごっこ遊びや模擬店、職業訓練などの開催が効果的でしょう。この人間関係・社会性の項目は、高学年に子どもを支援する際に重要です。
子どもが年齢を重ねるにつれて、就労と紐付けやすくなります。年代によって、適切なプログラムが異なるため、それぞれの子どもに合わせた内容を考えましょう。
5領域へ対応するための準備
放課後デイサービスが、今回の改訂に対応するためには準備が必要です。とくに、5領域へ対応する準備は重要です。
子どもたちが安心して利用できる放課後デイサービスになるよう、しっかり考えながら準備をしていきましょう。
ここでは、5領域に対応するための準備について解説しています。これから支援内容を見直す事業所は、ぜひ参考にしてください。
現在のプログラムを5領域に分類する
先述した5領域の項目を確認し、すでに支援プログラムに取り入れている事業所もあるでしょう。多くの事業所が、一部もしくは大半を網羅しています。
しかし、まだ不足している項目もあるはずです。そこで、まずは現在の支援プログラムと5領域を見比べ、不足している項目を特定します。
そして、支援プログラムの内容を5領域に分類することで、どの項目に強いのか把握できます。これらの作業から、足りていない項目は追加で支援プログラムの作成が必要です。
学年ごとに、5領域の分類と整理をしてみましょう。学年や子どもによって、5領域の割合が異なります。
事業所を利用する子どもたちのことも考えて、適切な割合になるようプログラムを作成しなければなりません。
足りていないプログラムの確認・見直し
現在の支援プログラムを5領域に分類できたら、足りていないプログラムの見直しを行います。内容が薄く感じた場合は、現在のプログラムにボリュームをもたせたり、新たなプログラムを考えたりしましょう。
プログラムの確認・見直しは、とても時間がかかる作業です。そのため、5領域に適したプログラムを外部から購入するのもひとつの方法です。
自分だけで考えられないときは、事業所のスタッフたちと相談して考えるのもよいでしょう。実際に支援を行うスタッフにも確認することで、より充実したプログラムができあがります。
支援プログラムで足りない項目があったら、早めに見直し作業に入ることが大切です。
プログラムの内容を整理・体系化する
作成した支援プログラムは、個別支援計画書へ記載します。そのため、計画書へ記載できるように内容を整理・体系化しなければなりません。
子どもたちの成長を確認する方法やどのようにアクセメントするのかについて、検討が必要です。支援プログラムの目標と基準が明確になる内容であれば、個別支援計画書が作成しやすいでしょう。
個別支援計画書は児童発達支援管理責任者が作成しますが、内容が整理・体系化されていれば負担が減らせます。
また、支援プログラムの基準を数値化できるようにしておくと、5領域に対応する準備ができます。
個別支援計画書について
放課後デイサービスは、支援プログラムなどを記載した個別支援計画書の作成が必要です。今回の障害福祉サービス等の報酬改定によって、個別支援計画書の取り扱いが変更されています。
そこでここでは、個別支援計画書の経過措置や、反映させるポイントについて解説しています。これから個別支援計画書を作成する事業所は、ぜひ参考にしてください。
経過措置の期間
5領域に対応した個別支援計画書は、2024年10月31日まで経過措置が取られています。それまでの期間であれば、従来の個別支援計画書に追記する形で対応可能です。
そのため、2024年10月31日以降は、個別支援計画書へ5領域に対応した支援内容の記載が必須になります。万が一、期限に間に合わなかった場合は、減算数の対象となるので注意が必要です。
放課後デイサービスを運営している事業所は、なるべく早めに個別支援計画書の作成に取り掛かりましょう。
個別支援計画書へ反映させるポイント
個別支援計画書を作成する際、見直した支援プログラムを反映させます。そこで重要なポイントは、課題やニーズを明確化することです。
個別支援計画書では、5領域に対して適切なアセスメントを行って、利用者の状況を的確に把握しなければなりません。そして、アセスメントの結果から、具体的な支援プログラムを考えます。
具体的な支援プログラムを実行し、利用者の成長や発達支援について個別支援計画書へ反映させるのがおすすめの方法です。
個別支援計画書の記入項目は細かく設定されているため、事前に記入方法を調べておくとスムーズです。
放課後デイサービスが2類型化される
放課後デイサービスの運営は、公費を使えることもあるため、悪質な事業者も増えています。そのため、適切な支援が受けられない事業所もあるのが現実です。
そこで、2024年2月に障害福祉サービス等の報酬改訂が行われ、放課後デイサービスは2類型化されています。
これは、適切な支援が受けられない事業所は、公費の対象外とするのが目的です。ここでは、放課後デイサービスの2類型化について詳しく解説しています。
総合支援型
総合支援型は、運営方針で定められた基本活動4つをすべて実行する事業所です。4つの基本行動には、創作活動や地域と交流する機会を作るなどがあります。
子どもたちが、飽きずに楽しみながら取り組める支援内容が大切です。地域との交流では、子どもたちの社会経験の幅が広がります。
総合支援型の事業所では、4つの基本行動を組み合わせて、子供たちの支援を行います。
特定プログラム特化型
特定プログラム特化型では、ほかの事業所よりも専門性の高い支援プログラムを実施します。放課後デイサービスを利用する子どもに合わせた支援内容を考えなければなりません。
しかし、一部の支援内容に偏ることがないプログラムであることが大切です。特定プログラム特化型の放課後デイサービスは、子どもが苦手を克服しやすいという点がメリットです。
一方で、すべての子どもに適しているとはいえません。特定プログラム特化型の詳細は、まだ議論中であり、確定するまで時間がかかると予想されています。
報酬改定後に重要なこと
障害福祉サービス等の報酬改定が行われたあと、事業所がするべきことを把握しておくことが大切です。今回の改訂で重要なポイントを、2つに分けて解説しています。
放課後デイサービスを運営している人は、ぜひ参考にしてください。
事務作業を効率化する
今回の改訂は、児童発達支援管理責任者の負担が増える内容です。たとえば、5領域に対応した個別支援計画書の作成や準備などがあげられます。
児童発達支援管理責任者の負担が増えると、残業をしたり、離職が増えたりする可能性があります。経営者としては、これらのリスクを避けたいものです。
そのため、児童発達支援管理責任者の残業や離職が増える前に、事務作業を効率化する必要があります。効率化するために、設備投資するのもひとつの方法です。
戦略を立てる
今回、障害福祉サービス等の報酬改定がされ、加算が増えています。たとえば、自立支援サポート加算や通所自立支援加算などです。
取れる加算はすべてとるという考えでいると、事務作業の負担が増える原因になります。また、加算は必ずしも収益につながるわけではありません。
そのため、事務作業の負担を増やしても、利益が見合わない結果になる可能性があります。加算する項目を絞って、効率化できるように戦略を立てることが重要です。
まとめ
今回は、障害者福祉サービス等の報酬改訂により、放課後デイサービスに義務化された「5領域」について詳しく解説しました。
この改訂は、利益を目的とした悪質な事業所を減らすのが目的です。放課後デイサービスの利用者が、安心して利用できるようになります。
放課後デイサービスは、5領域すべてを取り入れた支援プログラムの作成が必要です。また、それに合わせた個別支援計画書も作成する必要があります。
利用者が適切な支援が受けられるよう、しっかりと考えて作成しましょう。万が一、支援プログラムや個別支援計画書の作成で悩んだら、プロに相談するのもおすすめです。
また、今回の改訂により適切な支援を行っている事業所は、国からの補助金がアップする可能性があります。